日本へ留学に来る理由

留学生の多くが中国だ。来日理由を聞くと、以前なら「日本は経済が発展しているから」という理由が多かったが、今は「日本のアニメが好きだから」という理由が大半だ。また、さらに掘り下げて聞くと、中国での厳しい受験戦争からこぼれ落ちてしまった学生が日本に来ていることがわかる。中国国内の優秀な学生は、欧米の一流大学へ留学するか、国内の一流大学へ進学する。日本で言ういわゆるセンター試験にあたる「高考」で、高い点数が取れなかった学生が、留学斡旋業者から「日本は今少子化だから、簡単に一流大学へ入ることができる」と言われて日本にやって来る。 また、「生活環境を変えたくて日本に来た」という理由で日本に来る人もいる。なかには、彼女に振られて傷心を癒すために日本に来たという人もいた。

在校生のスリランカ学生に、なぜ日本に来たの?と聞くと、「オーストラリアよりも日本のほうがビザが下りやすかったから」と返ってきた。また、ネパール学生に同じ質問をすると、「日本はアルバイトがたくさんできるから」と返ってきた。

日本が留学先として選ばれなくなる未来もそう遠くはないだろう。

留学生ではなく、単純労働者

今年日本語学校に入学してくるのは、中国とベトナム人学生しかいない。これまで入学していたスリランカ、ウズベキスタン、ミャンマー、ネパールの留学生に、一切ビザが下りなくなったからだ。留学生としてではなく、単純労働者として日本に来て欲しいという国の意図があるのだろう。 これまで下りていたビザが下りなくなったことで、日本語学校の経営もより厳しくなる。昨年の日本語教師養成講座では、これから日本語学校が隆盛を極めるかのように聞かされていただけに、日本語学校の経営は入国管理局に振り回されるのだと痛感した。

毎月50%以下の出席率の学生は入国管理局に報告し、日本語学校はその学生に対してどのような対応をとったのか、詳細に記録に残してファイルに収めている。入国管理局の職員が突然訪問してきても、学生管理ができていることをアピールするためだ。何日も学生が学校に来なければ、学生の家まで訪問もする。毎日学生には出席率が大切だ言い続け、始業時間が始まると、まだ来ていない学生に教師が一斉に電話をかけ始める光景は異様だ。

さらに、来年からはJLPTの合格率が低い日本語学校は、適性校ではないとみなされるらしい。自分でお金を払って受験をしている学生に対し(選択の自由があるはずなのに)、一番下のレベルを無理やり受験させて、合格率アップを狙うような学校も出てくるかもしれない。

特定技能ビザを作った日本。欲しいのは留学生ではなく、単純労働者。そんなに都合よく、うまくいくものなのだろうか。

特定技能測定試験のテキスト

多くの日本語学校では、進学したい留学生を対象にしている。高卒では、日本で働くことはできないため(ビザが下りないから)、みんな働く資格を得るために、日本語学校で2年勉強した後、さらに高いお金を払って専門学校や大学へ進学する。しかし、進学できる日本語レベルに到達しない学生も多い。親に言われて日本に来たような、やる気のない学生だ。彼らは、決まって帰国はしたくないと言ってくる。そのため、彼らを日本語レベルが低くても入れる学校に入れてきた。学生管理をまともにせず、入学金や授業料を目当てにしているような学校にだ。しかし、そんな学校の問題が明るみになり、ニュースで取り上げられるようになってからは、これまでと同じことはできなくなった。代わりに、今年からは特定1号に流そうという話がでているはずだ。

詳細はまだ把握できていないが、結局特定1号のビザをもらうには、JLPTのN4相当の日本語レベルが求められている。学校の回覧で回ってきた、一般社団法人日本フードサービス協会が作成した「外食業技能測定試験学習用テキスト」 に目を通した瞬間、わたしは唖然としてしまった。思わず、これのどこがN4レベルなのかと声に出してしまった。N1レベルの語彙がごろごろ出てくる、ただ漢字にルビを振っているだけのテキストだった。テキストの作成に日本語教師が介在していないのは明らかだ。これで学習をしたところで、理解できる留学生はいないだろう。

鏡に映る白髪を見て

転職をしてしばらく経ってからある異変に気がついた。なんと、白髪が何本か生えていたのだ。以前よりもストレスフリーになったと思っていたので、これには驚いた。環境が変わると、人は何かしらのストレスを感じてしまうものらしい。

それからというもの、白髪は順調に増え続けている。しかも、右側のこめかみあたりに集中している。なぜこの場所だけなのか、不思議に思っていたが、もしかしたら右目だけで長時間パソコンを見ているせいかもしれない。いわゆる、眼精疲労?もっと目を労わろうと思う。

盲目の人への漢字指導

道村静江『口で言えれば漢字は書ける!』盲学校から発信した漢字学習法、小学館、2010年

今の自分の日本語学校での漢字指導のやり方に満足がまったくできずにいた。そんなときに、盲学校で漢字を指導していたという教員の漢字指導書に行きついた。目が見えない人に、どうやって漢字を教えるのか?そこに書かれていた内容は、十分に外国人にも適用できるものだと感じた。「漢字はパーツ指導だ」と日本語教師の養成講座で教わったものの、結局その意味をこの本に出会うまで完全に理解できていなかったのだと気がついた。

  • まずはカタカナを覚えさせ、漢字の中にあるカタカナが分かるようにする。
  • 基本的な部首の書き順、とめ、はね、はらいなどを正確に書けるようにする。
  • 基本的な部首の意味と形を覚える。
  • 漢字は組み合わせであることを理解させる。
  • 漢字には意味があることを理解させる。
  • 書かなくても、漢字を書けるようにする。
  • 漢字を読んで覚える。
  • 覚えた漢字を使う場面を設ける。など 

上記はいずれもすでに私自身が知っていたことと重なる部分も多い。盲学校での漢字指導と完全に同じやり方で外国人へ指導することはできないと思うが、結局学習対象者に合わせて何が学習上の問題なのか教え方を考え続けない限り、持っている既存知識は無駄になってしまうのだと感じた。また、盲学校の漢字指導が外国人への漢字指導にも使えるように、外国人への漢字指導は、そうでない人にも有用なのだという可能性に気づけた。

エヴァンゲリオンと進撃の巨人

最近、夫に勧められて見たアニメの中でハマったのが、エヴァと進撃の巨人だ。やはり人気のアニメには人気になるだけの理由があるのだと痛感した。夫に感化されて、授業中学生にアニメの話しばかりするようになった自分に気がつき失笑。

外国人と医療機関②

晩ご飯を食べている最中、日本語学校を休んだ学生とやり取りをしていた。「腰を痛めました。起き上がることも大変なのに、バイト先が休ませてくれません。」事情を聞くと、一昨日から腰を痛めて動けない状況らしい。マネージャーに電話したものの、結局休ませてもらえず、無理してアルバイト先へ行ったものの、結局腰が痛くて30分で退勤したらしい。その後、何度訴えても休みの許可は下りないとのこと。そんなアルバイト先なら辞めたほうがいいと言うと、家賃が払えないから無理だと言う。国の両親に現状を伝えてお金をもらえばいいと反論すると、親に迷惑を掛けたくないから言わないと一点張り。

そもそも、なぜ病院に行っていないのか学生に聞くと、現金の持ち合わせがないからとの答え。また、動けないなら、最悪救急車を呼ぶしかないと言うと、そこまでしなくていいと言ってきた。「でも、学校に来れないほど動けないんでしょ?」 この堂々巡りの会話をし続け、ようやく明日病院に行くと本人が言った。トイレに行くぐらいは動けるようだったので、救急車は呼ぶ必要がないと判断した。ただし、アルバイト先が休みの許可をくれないとのことだったので 、仕方なく私がお店に電話をし、学生を病院に行かせるのでとりあえず明日は休ませてくださいと伝えることになった。 学生には、病院で診断書をもらってアルバイト先に提出し、今後いつから出勤できるのかをしっかりアルバイト先と話し合うように指導した。

今回の一件で、休みを許可しないアルバイト先もどうかと思ったが、日本語学校の先生が助けがないと、まともに医療機関にかかれない留学生もいるのだと痛感した。

外国人と医療機関①

休暇中、担任をしているクラスの学生からLINEが来た。「病気になってしまったが、どの病院へ受診しに行けばいいのかわからない。どこも閉まっている。」私はすぐに救急相談センターに電話をし、その学生が住んでいる近くで、週末でも緊急外来の対応をしている病院を探してもらった。3つの病院を電話口で聞きながら急いでメモをした。音声案内が2回流れるのだが、1回目ですべて聞き取ってメモをするのは、日本人の自分でも難しいと感じた。ましては、つたない日本語の外国人であれば、まず緊急相談センターには電話はできないなと感じながら、書き取った病院に電話を掛けた。

まず、電話をして衝撃だったのは、緊急外来を必要としているのが外国人だとわかった時の病院側の反応だった。「その人、日本語は話せますか?」「いいえ、日本に来たばかりでほとんど話せません。」「じゃあ、うちでの受診は無理ですね。受診内容を正確に本人に伝えられませんから。」まさか、断られることがあるとは思っていなかった。 他の病院にもかけたが、反応は似ていた。「保険証もっていますか?受診料が未払いになると困ります。」これが今の日本の医療機関の現状なのかと落胆した。最終的に、通訳できる人が同伴できるなら大丈夫ですよと言われた病院に行くことになった。たまたま私はその学生の話す言語を習ったことがあったからだ(あきらかに医療用語を通訳できるレベルではなかったが、できると言わなければ受診させてもらえなかった)。

外国人がこれだけ増えているにもかかわらず、誤診を招くと責任が取れないからと、日本語が話せなければ緊急外来の対象外になってしまうという非情な現実。すべての病院がこのような対応をとっているのかはわからないが、少なくとも電話をかけなかった病院が、積極的に外国人の緊急外来を受け入れているとはとても思えない。